Emotion Management: The Importance of Intuition
感情マネジメント:直観の重要性
プレッシャーのかかる状況下では感情が揺さぶられ、いつも通りのパフォーマンスを発揮することはなかなか難しいものです。
例えば、
・期限が迫ってきているのにお互い譲歩せず、なかなか前に進まない交渉
・意思決定をくだすシニアマネジメント向けのプレゼンテーション
そんな時に、
・予期していなかった質問をされて答えに窮してしまう
・資料のタイプミスや計算間違いを指摘される
・聴衆が退屈そう、不満そうな表情をしている
このような事態が起きるとついつい動揺してしまい、普段通りの力を発揮することができず、交渉やプレゼンテーションが失敗してしまうケースが多いと思います。
そこに異文化コミュニケーションという要素が加わるとその難易度は更に上がります。
交渉の当事者間やプレゼンテーションの聴衆との間で文化的相違が発生し、お互いが理解しきれず、更に感情が揺さぶられてしまうからです。
英語で交渉やプレゼンテーションをする際は、言葉一つ一つにも余計に気を配らなければならず、
・言いたいことはちゃんと伝わっているのか
・発音は変ではないか
・質問されたくない
そんな不安を抱えながらのコミュニケーションになりがちです。
これらの障害を突破するには、事前の準備を徹底することが大事なのは言うまでもないのですが、他に重要なのは、
感情を揺さぶられてもいつもの自分を取り戻し、通常のパフォーマンスを発揮できるように「自分の感情をマネジメントする」ことだと思います。
一般に、日本人は感情を表に出さない人種だと思われがちです。
特に公の場では、周りの人との対立が起きないように、自分の感情を抑え言動を控えめにする傾向にあるでしょう。
周りとの調和を重んじ相手の感情を慮るのは得意なのですが、人と違う行為や言動は敬遠されがちです。
しかし、自分の感情を抑え続けるとどうなるでしょうか?
それは、感情を表に出さないことが当たり前となり、いつしか自分の感情に鈍感になってしまうのです。
私個人の話をします。
私は32歳からのMBA留学を機に、国際結婚、そして外国人と仕事をする機会が増えました。しかし、年齢を重ね大人の対応を求められるにも関わらず、逆に感情を取り乱してしまうことが多くなってしまったのです。
私はもともと公の場で自分の意見や感情を表現することが苦手でした。日本人に囲まれた環境では、それでも自分を取り乱すことはほとんどありませんでした。
それが外国人と接するようになってから、言動、考え方、価値観の違いに戸惑いを感じ始めたのです。
はじめのうちは、「理解できない」「日本/日本人だったら~なのに」と心の中で言い聞かせ、その違いを無視することでカルチャーショックを吸収していました。
しかし、外国人とより深い関係を築くためには、自分の心を開く必要性を感じ、積極的に意見や感情を相手に伝えようと決心しました。
感情を取り乱し始めたのはその頃からです。
自分の感情をどのように表現してよいのか分からないばかりか、表現しようとしても自分の感情を無意識に押し殺していて、その積み重ねが反動となり感情の爆発につながっていたのです。
そこで私は、自分の感情が顕在化するまでに自分の感情を把握しコントロールすることが重要と考え、
対策としてまずあらゆる事象に対して自分がどのように感じ、何を思うのか、自らの感情を知ることから始めました。
具体的には、
1. 好き/嫌いリストをつくる
・好き/嫌いなテレビ番組、映画、本、言葉、授業、仕事内容、人、等々をリストアップする
・好き/嫌いな理由もセットで考えてみる
2. 「何でもよい」「どちらでもよい」という選択肢をなくす
・夕食に何を食べるか、午後は何をしたいか、といった日常の些細なことから、自分がよいと思うオプションを決める
・あまり考えこまず、自分の直感を大切にし、その感覚に従ってみる
とてもシンプルで簡単なことのように思えますが、当時の私にとっては大変な作業でした。
何かを選択する際、周りに迷惑をかけないように自分の意思を抑えて「どちらでもよい」「何でもよい」と言い続け(思い続け)てきたせいで、それが自然となっていました。
仕事の会議や議論の場では、人と違った発言をして馬鹿にされたくない、進行を妨ぎたくない、という意識が働き、自分の意見を口に出さないことが多くなっていました。
そのように育った私は、いつしか自分の感情が自分でも分からなくなっていたのです。
時間はかかりましたが、上記のトレーニングを実施することで、徐々に自分の感情が顕在化してきました。
好きなもの・嫌いなものが明確になり、自分の感情に敏感になり、直感力が増していきました。
自分の感情を知ることで、今現在の感情の状況や、どうされると感情がどのくらい揺さぶられるのか、感覚値として把握できるようになってきました。
そして、感情を揺さぶられた際に、どのように対応すべきか事前に考えることができるようになりました。
日本では国をあげてダイバーシティーが推進される中、自分と異なる考え方や価値観を持った人たちと接する機会が増えています。
会社でも、外国人と一緒に働く、生え抜きと転職組が共に働く等々、ダイバーシティーな環境で働くことが多くなってきていると思います。
そこで他者を受け入れられず感情的になってしまっては、多様性をいかすどころか、組織、チームにとってマイナスになってしまいます。
皆さんはご自分の気持ちや感情を把握していると言い切れますか?
本当の感情は、自分の奥底に潜んでいて自分でも気付いていないかもしれません。
外部を受け入れる準備体操として、まずは自分の気持ちや感情を把握することから始めてみてはいかがでしょうか?