“Visionary's Global Journey“ 奥野祐次
オクノクリニック総院長
Aun Communication が支援したビジョナリーなリーダーの「キャリアとマインド」「ビジョン」「グローバルな挑戦」「お客様の声」を発信するビジョナリーズ・グローバルジャーニー。
ご紹介するのはオクノクリニック総院長の奥野祐次氏。2006年3月、慶應義塾大学医学部卒業。放射線科医として血管内治療に従事したのち、大学院にて「病的血管新生」の研究を行い、博士号を取得。その後、江戸川病院で関節の痛みに対するカテーテル治療という新しい治療方法を確立し、2014年4月に運動器カテーテルセンター センター長に就任。2017年10月に横浜にてOKUNO CLINICを開院。現在はオクノクリニックの総院長として国内に10箇所あるオクノクリニックで「みんなに笑顔になってほしい」というモットーに年間5000件の五十肩や肘・膝などの痛みの治療を行なっている。スポーツ選手からも圧倒的な支持を得て、プロゴルファーの丸山茂樹選手らの痛み治療を行なってきた。
今回は奥野先生の高校時代から振り返り、痛み治療の普及を国内から海外に広げる展望の中で、Aun Communicationのサポートについて語ってもらった。
父は癌治療に携わる医師、母は精神科医という医者の両親の元に生まれたが、将来は医者にというプレッシャーをかけられることはなく育った。ところが「自分は医者にならないといけない」という勝手な思い込みが心のどこかにあったようで、慶應義塾志木高等学校への入学と同時に医者を目指すことを決意する。
志木高は自分にとって居心地のよい場所だった。生徒は「ちょっと変わった子」ばかり。先生もユニークで、普通の高校と違い教科書やカリキュラムを超えて「考える」授業を繰り広げてくれる。教科書や成績を追わない自由な雰囲気が、自分の個性をより研ぎ澄まされたものにしてくれたように思う。在学中は百人一首や数学オリンピックなど、興味のあることに集中して取り組む中で、「人と同じではなく、違ったほうが良い」という発想が得られたのは、その後の人生に大きく影響を与えている。慶應義塾大学の医学部に内部進学した後も、常に人とは違う何かを追い求めながら、医療イノベーションを興す、つまり新しい医療の分野をつくって、世界の医療を変えたいというような熱意を持ち続けることができた。
6年間医学部で学んだ後に、初期研修医として2年間一般病院へ行ったが、その後は出身大学の医局に入る従来の道筋を選択しなかった。在学時から「医療イノベーション」に重きを置いていた自分は、半年だけ父の病院で研修をし、その後、新しい治療の開発を目的に慶應の医学部研究科大学院に入学。3年間研究に没頭する道を選んだ。テーマは「病的血管新生」。父がカテーテルを使った癌の治療を専門としていることもあり、そのカテーテル技術を痛みを持っている人に応用できないか、という仮説をもとにした研究だ。この研究から「モヤモヤ血管の運動器カテーテル治療」を始める。それまでにない治療法ではあったが、研究室では動物実験などをし、治療法の確立に没頭した。安全かつ効果の期待できる治療法である自信があったので、それを慶應病院で展開したいと願ったが、病院側と交渉しても新しい治療にはリスクがあるはずだからと取り合ってもらえなかった。これではいつになってもこの新しい治療方法が普及できない。大学病院で広めることの限界を感じ、思う存分自分の治療を展開できる環境を探し、29歳の時に江戸川病院に辿り着いた。
より多くの人を痛みから救いたい
その強い想いから複数クリニックの開院へ
2012年から江戸川病院で新しい治療を始めた。診られる患者さんの数が少しづつ増えて、治療への評価が高まった2015年、一般の方に向けた書籍『長引く痛みの理由は、血管が9割』(ワニブックス刊)を出版。これが、大きな反響を得ることとなる。これまでにない痛みの治療法だったこともあり、マスコミに大きく取り上げられた。その直後から、江戸川区を超えて、全国から患者さんが自分を訪ねてくるようになる。ウェイティングリストは常時1000人を超えるような状態になったが、江戸川病院では週1度の外来診察日しか割り当てられず、到底自分を頼ってくる患者さんたちを見きれない。この現実を打開する案として、2017年に江戸川病院を辞めて開業することを決意した。
最初のクリニックは、父が経営していた横浜の診療所を改修したものだった。10月10日に開業したが、その直前10月6日には2つめのクリニックを開院すべく、都内の物件の内見をしたのを覚えている。分院展開が早く、金儲け主義という批判も受けたが、最初から複数のクリニックを開院したのは、「痛みに苦しむ患者さんに長距離の移動を強いたくない」という純粋な気持ちがあったからだ。幸運なことにカテーテルの高い技術を持つ先生たちが志を共にしてくれた。書籍やテレビだけでなく、ネットでの検索や口コミも相まって、診察を希望する患者さんは全国に広がり、容易にアクセスしてもらえるために、今では関西、北海道、福岡など全国に合計10箇所のクリニックを抱えている。
この治療法に関しては、当初から賛否両論が多くあった。自分の中では、長い間研究を重ねて、安全で安心な治療であることに自信があったが、それまでにない全く新しい治療法。既存の発想から外れている。また自分はどこの組織にも属していないため、日本の医療の社会的な枠組みからも外れている。良くない噂も耳に入ってきたが、それでもなお頑張れたのは「痛みを取り除き、患者さんの笑顔に貢献したい」という強い信念があったからだと思う。全員から好かれる必要はない。むしろ「あいつ、変わっているよね」と言われても、それは褒め言葉であると思えたのは志木高での経験が理由だろうか。実際に痛みから解放された患者さんと接することが、何よりもの励ましであり、開業後の推進力になっている。
視野を海外に、可能性を広げるために。
特別なビジネス英語のサポートが必要
2020年頃から世界各国で行われる学会に招待される機会が増えていた。帰国子女でもなく、留学経験もないが、アカデミックな医学英語を使う論文発表に関しては、医師の間でなんとなく共通言語を使う感覚があるので、苦手意識はあるものの乗り越えてきた。今では、世界中の医師がこの治療法を再現し始め、各国でコミュニティができ、治療方法についてお互いに意見交換ができる場が整い始めている。
折しも2021年にアメリカのFDA(アメリカ食品医薬品局)からこの治療の膝への施術に対して認可が取れ、民間の医療保険でもカバーできるようになり、潮目が大きく変わってきた。この技術のランセンス契約のことや、医療関係者以外の人たちとのビジネスディスカッションの機会が増えてきたのだ。これまでの学会発表とは違った英語の使い方やアプローチが求められていることを痛感。世界中にこの医療を広めたいという気持ちがあるのに、自分の英語コミュニケーション能力がボトルネックになっているのだとしたら、そこは真っ先に改善するべきだろう。そこでAun Communicationの八木さんに相談をし、サポートを依頼することにした。
より深いレベルの思考を鍛える
英語コーチングとコンサルテーションの意義
Aun Communicationのセッションはコーチング(思考の整理や内省を通じて、個人・経営者としての成長を促すセッション)とコンサルテーション(海外展開に向けた助言やマッチング)の2本立て。これを時々のニーズや課題に応じて、選べるのがとても良かった。
特に英語でのコーチングは期待を上回る効果があった。「自分はどういう考え方をしているのか」という内省はこれまでの人生でしっかりしてきたつもりだった。しかし、それは日本語でという条件付きだったことに気付かされたのだ。エミリーさんとのセッションは無論英語。日本語でのコーチングだと何を聞かれても「とりあえず」のテンプレート的な反応や回答ができるが、英語だとそれができない。一旦、自分の中に質問を取り込んで、よく考えてから反応する。今一度、自分を顧みることができたのは大きな発見だ。
またコンサルティングでは、これまでのブランディングは「日本国内」という枠の中にいる自分の大きな思い込みの上に成り立っていることを知った。海外で資金を集めて事業を拡大するという規模になると、独りよがりのブランディングでは通用しないことを痛感。こちらでも第三者の視点が入ることの重要性を認識できた。
そして何より、これまで1人で直面していた課題に、八木さんとエミリーさんという仲間が加わり、チームで一緒に取り組んでいる実感が、自分のビジネス拡大を強く後押ししてくれているように感じる。これまで8回ほどセッションを受けたが、信頼をもとに自分すべてをオープンにすることで、海外での事業拡大への課題が具体的になり、より確かな道筋として見えてきている。実践を想定したケースに取り組むことで、海外の弁護士など専門家との打ち合わせなども恐怖感なく臨めるのは大きな成果だ。
日本だけでなく、世界中であまり効果のない痛み軽減治療を受けて、時間を無駄にしている人が多い。このカテーテル治療を受けることで短い間に痛みを克服できたら、人生はより豊かで実り多いものになるだろう。大学卒業からかれこれ20年、自分は「痛みに対し、効果的に対応できる世界を築きたい」という変わらぬ想いを持って、ただひたすら走ってきた。近いうちにそれを世界中の人と共有できるようになりそうだ。さらなる前進に胸が高鳴っている。
【文】黒田順子
その他のビジョナリーズ・グローバルジャーニー
後藤俊輔(株式会社ナシエルホールディングス代表取締役)
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