日本企業で外国籍社員は活躍できるのか
2023年頃から、海外駐在員のサポートに加え、日本企業で働く外国籍社員を支援するようになりました。その中で見えてきた「現状」、そして私が抱いている「危機感」について以下のnote記事にまとめました。
note記事: 日本企業で外国籍社員は活躍できるのか
(以下一部抜粋)
日本本社で起こっていること、そしてその結果どのような未来が訪れるのかを考察してみます。
1. 短期的視点: コミュニケーション問題
外国人と日本人が働く際に、はじめにぶつかる壁がコミュニケーションです。日本本社に外国籍社員が入ることで日本人社員も「英語」の使用を余儀なくされます。日本語を話せる外国人のみを登用・採用し、これまで通り日本語で経営する、という手法もあるかもしれませんが、グローバル経営を掲げる企業にとっては逆行しているように思えますし、それではグローバルマーケットから優秀な人材を集めることはできません。日本本社の中で、英語をビジネスレベルで使いこなせる従業員の数は限られているので、役員や部長クラスの外国籍社員には通訳をつけたりします。しかし、会議中は何とかなるものの、全てが会議中に決断・意思決定されるわけではなく、会議以外でのコミュニケーション(根回しや雑談、飲み会やランチ時など)が意外と重要だったりします。コミュニケーション方法(ハイコンテクスト vs ローコンテクスト)、働き方やカンパニーカルチャーの違いなども相まって、なかなか相互理解が進みません。異なる意見や視点が重宝されるべきなのに、それがうまく活かされていないのです。
2. 中期的視点: 外国籍社員の孤立
最近では転職が当たり前になり、日本の伝統的企業の日本本社でも中途社員の割合が増えています。しかし、まだまだマジョリティは新卒から1つの企業に勤めている生え抜き社員ではないでしょうか。そして、定期的な人事異動や強固な同期の結びつきなどもあり、社内の至るところに生え抜き社員のネットワークが形成されています。個人的には、この非公式のネットワークは日本企業の強みの一つだとも思っていますが、外部から入ってくる人にとっては目に見えない障壁となって立ちはだかります。日本人でも転職先企業で活躍するには、このネットワークに入り込む、もしくは邪魔されないように上手く立ち回る必要があります。言語の壁があり、そもそもその重要性を認識していない可能性がある外国籍社員にとってはさらに厄介です。時間が経つにつれて孤立してしまうことがあります。
そんな外国籍社員が日本本社で働き続けるためには、彼ら・彼女らの上司のフォローアップが必要不可欠です。日本企業特有のカルチャーや働き方を説明したり、外国籍社員が抱える違和感の内省を促進したり、本社での人間関係構築やコミュニケーションの取り方について助言したりするなど、上司がしっかりとサポートすることがとても重要です。しかし、たとえその関係性がうまくいっていたとしても、人事異動や組織変更によりその上司は3〜5年周期で変わってしまいます。そのタイミングで外国籍社員のモチベーションが低下し、最悪の場合、離職してしまうケースも見聞きします。
3. 長期的視点: 会社のレピュテーションリスク
日本本社で外国籍社員が活躍できないということは、海外拠点を含めたその企業に属する他の外国籍社員のモチベーションを大幅に下げる(*ガラスの天井を感じさせる)ことに繋がります。
また、外国人材を活かせない日本企業に、転職市場から優秀な外国人材が集まるとは思えません。「日本企業では日本人以外は活躍できない」という悪評がグローバル規模で広がってしまうかもしれません。
一方、日本本社側の立場に立つと、外国籍社員を登用・採用することで、採用コスト、オンボーディングにかかる費用、通訳を雇う費用など、様々なコストが発生します。お金以外にも、外国籍社員が入る会議だけ資料を英語にしたり、外国籍社員の(良い意味でも悪い意味でも)予測できない言動のアフターフォローにエネルギーやリソースを割く必要が出てくるかもしれません。
その結果、「外国籍社員を日本本社で登用・採用するのは大変だ。コストもかかるし、とても非効率だ。やはり、日本本社は日本人だけで運営する方が良い」という結論に達してしまう恐れがあります。これが僕が抱いている懸念事項です。試験的な取り組みの中で外国籍社員の活用に失敗してしまうと、その揺り戻しが起こる可能性があり、その圧力は強力で、場合によっては、もう二度と日本本社のグローバル化に舵を切ることができなくなるのではないかと危惧しています。