Intercultural Communication Competency Audit

異文化コミュニケーション能力査定

 

異文化接点が増えれば増えるほど語学力に磨きをかけたくなるものです。それ自体は良いことですが、語学だけにフォーカスしてしまうのは、異文化コミュニケーション能力を上げるには不十分です。もっと大事なことを自身の経験に照らし合わせてご紹介します。 

30歳の時にシンガポールにMBA留学することを決めた私は、仕事以外の時間のほとんどを英語の勉強に充てていました。TOEFLのスコアは向上し、何とかシンガポールの大学院からオファーをもらったのですが、いざ留学してみると全く英語で議論ができない、いや、会話すらままなりませんでした。その時は、国内でアウトプット(Speaking)の練習をしてこなかったことが原因だとシンプルに分析していました。 

しかしその後、国際結婚、シンガポールでの勤務経験、ロンドンでの米系企業での勤務を経て、語学に焦点をあてるあまり、異文化コミュニケーションで必要な他の要素をないがしろにしていたことに気付きました。 

コミュニケーションは知覚・感情・思考の交換で、つまり、相手を理解(受け取る)し、自分を理解してもらう(伝える)行為です。言語はコミュニケーションの一部に過ぎないのです。コミュニケーションは、言語以外にも、非言語コミュニケーション、相手の理解力、熱意、質問力、交渉力、自信等々、様々な要素で成り立っています。話し手は聞き手に聞き流されずに理解してもらえるように、人間としての魅力も必要になってきます。異文化間でのコミュニケーションとなると更に複雑で、文化的な特徴の理解、相手の文化への対応、経験、オープン・マインド等、語学力を上げる以外にもやるべきことはたくさんあります。

私は語学力の他に、英語を話す自信相手を理解するためのアクティブ・リスニング、そしてオープンかつクリアーな伝え方が足りていませんでした。

  • 英語を話す自信

シンガポール留学中の私は、

英語を発することができない ⇒ 語学力が足りないと解釈 ⇒ 英語の勉強に励む ⇒ やっぱり実践で英語を発せない ⇒ 更に勉強に集中・・・

という負のループに陥っていました。

完璧な英語を求めるあまり英語を発する機会を失っていたのです。

英語漬けの毎日ではありましたが、自ら発した英語量は読む・書く・聞くの3技能に比べれば圧倒的に足りていませんでした。

英語で会話するには自信が必要で、その自信をつけるには、やはり場数を踏む必要があります。

完璧でなくても気にしない、完璧な人などいないと開き直り、積極的に勇気を出して英語を発する機会、時間を意識的に増やすことが重要だと思います。 

  • アクティブ・リスニング

英語を発する(話す)機会を意識的に増やし自信が出てきたとしても、相手のことを理解しなければコミュニケーションは成立しません。

英語を積極的に使い始めて少し自信がついてきた頃、その自信とは反比例するように多くのミス・コミュニケーションが発生しました。

相手の話していることを自分のフィルターを通して解釈していたため、相手のことを勝手に理解していると勘違いしていたのです。

相手の発する単語を拾うことに集中するあまり、話全体の大意やその裏にある相手の感情を理解することに気が回っていませんでした。

この過ちに気づいてからは、相手を理解するためのアクティブ・リスニングの手法を活用することで克服していきました。

  • オープンかつクリアーな伝え方

育った環境や考え方が異なる相手に自分のことを「言葉なしに理解してもらう」には限界があります。

言われてみると当たり前のことなのですが、当時の私は言葉に出さなくても「自分のことを理解してくれている」という淡い期待を相手に抱いていました。

日本人は、「以心伝心」や「あうんの呼吸」の文化が根付いていて、言葉に出さなくても相手に思いが伝わることが美徳とされます。

異文化コミュニケーションにおいては、「以心伝心」「あうんの呼吸」が通じないことを、日本人は特に肝に銘じておく必要があると思います。

さらに、このような文化で育った我々日本人は、自分の考えや意見を分かりやすく説明することに慣れていません

私はこの意識を変えると共に、分かりやすく説明する訓練を積むことでこの問題を乗り越えていきました。

異文化コミュニケーションでは、どんな些細なことでも言語化する(オープンに)、相手に分かりやすく伝えていく(クリアーに)過程が大切で、その積み重ねが相互理解につながっていくのだと思います。

皆さんの場合はどうでしょうか?

異文化コミュニケーション力を上げるために、語学力以外に必要な要素は何かありますか?

私の課題だった、「自信」「アクティブ・リスニング」「オープンかつクリアーな伝え方」は問題ないでしょうか?

他にも色々な要素が考えられると思います。

異文化コミュニケーション力を上げるために最も大事なのは、自己分析をして、ご自身の強みと弱みをハッキリさせることだと思います。

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BlogEmily Palmer